あなたの会社の社員が裁判員に選ばれたらどうしますか?
〜裁判員制度と雇用管理〜 |
裁判員制度とは?
裁判員制度とは、無作為に選ばれた国民が、刑事裁判の第1審の審理に参加し、裁判官と一緒に有罪か無罪かの事実認定、および、有罪の場合その量刑を決定する制度で、平成21年5月21日より実施されます。一見、アメリカで採用されている陪審員制度と似通っておりますが、刑の量刑も判断する点で陪審員制度とは異なります。
|
| A. 裁判員に選任されるまでの流れ |
|
| 裁判員として選任されるまでの流れは、以下のとおりです。
|
1. 裁判員候補者名簿の作成
(裁判員候補予定者を毎年1回、くじで選び裁判所毎に作成) |
|
▼
2. 裁判員候補者名簿に載ったことを通知
(辞退事由等の有無を確認する質問票と共に呼出状を送付) |
▼
▼
4. 裁判員候補者を選任、呼出状・質問票の送付
(辞退事由に当たる事柄がある場合はその旨を質問票に記載して送付)
|
▼
5. 指定された期日に裁判所に出頭裁判官から面接を受け裁判員が選任される
(ここで初めて裁判員となります) |
▼
6. 審理の開始
(概ね3日以内に結審、長くても5日超と事件によって異なります)
|
| B. 裁判員を辞退出来るケース |
|
原則、裁判員になることを辞退することは出来ません。しかし、下記のような「辞退事由」(法16条)に該当すると認められた者は、裁判員となることを辞退出来ます。
|
◎70歳以上の人 ◎地方公共団体の議会の議員 ◎学生・生徒
◎5年以内に裁判員や検察審査員などの職務に従事した人
◎過去1年以内に裁判員候補者として選任期日に出頭したことのある人
◎次のような理由で期日に出頭するのが困難な人
ア.重い病気や障害がある場合
イ.介護又は養育を行わなければ日常生活に支障が出る親族がいる場合
ウ.その事業における重要な用務であって自らがこれを処理しないと当該事業に著しい損害が出る場合エ.父母の葬式など社会生活上の重要な用務があって、その日でないと出来ない用事がある場合
|
|
| C. 従業員が裁判員(候補)に選任されたら |
|
裁判員制度が来年の5月より施行されるといっても、実際のところはどのような対応をすべきなのか、悩ましいこともあると思います。
導入にあたって、寄せられる疑問や相談を以下にいくつか事例として挙げておきます。
|
【相談事例1】
社員が裁判員に参加するための休暇取得の申請がありました。人手も少ないし選任手続きに行って欲しくないのですが・・・
裁判員制度は労働基準法第7条の「公の職務の遂行」に当たるため、会社は休暇の申請があった場合、それを拒否することが出来ません。さらに辞退事由もなく呼び出しに応じない場合は、罰金が課されますので、そのことを鑑みても休暇申請を拒否することは出来ません。 |
【相談事例2】
裁判員制度による、休暇期間中の社員の給与はどうすればいいでしょう?
労働基準法第7条については特に有休休暇にすべきとはなっておりませんので、給与を支払う、支払わないのはそれぞれの会社の自由になります。ただ、私用による休暇ではなく、公の職務による休暇なので、出来れば有休休暇にするのが望ましいでしょう。なお、裁判員として、職務に参加している期間中は手当が裁判所から出ますので、本来の給与と手当の差額を支払うようにするなど、それを上手に活用する方法もあります。。 |
【相談事例3】
召喚された社員に、裁判に関することなど色々と聞いてみたい。
裁判員となった者に対しては、評議の経過や裁判官・裁判員の意見などといった評議の秘密や、それ以外の職務上知りえた秘密を漏らさないという義務を課されていますので、感想を聞く程度に留めるべきでしょう。 |
|
| D. 裁判員制度が始まるにあたって、会社が備えておいたほうがよいこと |
|
□就業規則などの整備
就業規則を整備して裁判員として呼ばれた場合に、どういうルールにするかを決めておきましょう。例えば就業規則の中にある、「公務の執行」といった項目の中に裁判員として召集されたケースを含めるのか、また、別に裁判員休暇といった制度を設けるのか。さらにその休暇を有休にするのか?無給にするのか?それとも日当との差額を支払うのか?こういったあたりも決めておく必要があります。そして最後に休暇の申請をどういう手続きと手順にするかを決める必要があります。通知が来た時点でなるべく早く休暇の申請を出させるのか、さらに書面で届け出するのか?誰に届け出るのか?このあたりも引継ぎなどに関わってくるため、しっかり決めておくことが必要です。
また、裁判員休暇中の引継ぎや緊急連絡の体制に関する事項を決めておくのもよいでしょう。大手企業などでは有給の裁判員休暇といった制度を設けるところも出てきております。以下に参考として、就業規則の規定例を2つ掲載しておきますので、それを参考に、どのような制度にするかは経営理念・考え方にそって考えてみてください。 |
【就業規則の規程例1】 公の職務に含める場合・無給
Case1(公民権行使の時間)
1. 社員が労働時間中に選挙権の行使、その他公民としての権利の行使、または裁判員候補者としての出頭、その他公の職務の遂行をするため、あらかじめ申し出た場合には、会社は必要な時間を与える
2. 前項の申し出があった場合に、会社は、権利の行使または職務の遂行を妨げない範囲でその時間を変更することが出来る
3. 賃金は無給とする
【就業規則の規程例2】 裁判員休暇を導入する場合・有給(手当の支給)
Case2(裁判員休暇制度)
1. 裁判員制度の裁判員および裁判員候補者としての呼び出しを受けた場合には、会社は申請によりその職務の遂行に必要な日数の休暇を与える
2. 前項による休暇の申請は、呼び出しを受けた後、遅滞なく直属の上司に書面にて申し出るものとする3. 賃金は、無給とし、かわりに通常の1日分の賃金から、裁判員法により支給される日当(旅費・宿泊費は含まない)を差し引いた額を裁判員手当として支給する
4. 社員が労働時間中に選挙権の行使、その他公民としての権利の行使、または裁判員候補者としての出頭、その他公の職務の遂行をするため、あらかじめ申し出た場合には、会社は必要な時間を与える |
|
□引継ぎ・協力体制の構築
絶対にしておかないといけないことは、裁判員として呼び出された人がやっていた業務の引継ぎ作業でしょう。例えば当日こんな打ち合わせがあって、それに必要な資料がこれで、などといった業務の引継ぎです。それと同時に、普段からどこに何があるというところから、取引先に関するデータの共有や、誰もがそれを参考にして対応出来る体制を取るといった情報・作業の共有化と効率化を、常日頃から図っていくことも、いざ裁判員として誰かが呼ばれた際に役に立つはずです。
また、人手をギリギリで回しているような企業にとっては1人とはいえ、人が抜けるのは大変なことですが、それゆえにこういう時にこそ、ほかの社員が協力しあえるかどうかという点も大事ですので、そのような職場環境を作るように心がけておくのも効果があるといえます。社員が裁判員として呼ばれた際に備えて、有給休暇を適度に取らせるなどして、社員の裁判員休暇を想定した、情報・作業の共有化と効率化の具合をテストをしてみるというのもひとつの手法です。
ここまでご説明したように、裁判員制度というのは会社にとって意外と大きな影響を及ぼします。それゆえにこの新しく始まる制度に会社としてどう対応していくのかが課題となります。
備えあれば憂いなしといいますが、出来る準備はしておくことで、いざ社員が裁判員として呼ばれた場合でも、慌てない社内環境づくりを心がけて下さい。
企画監修:株式会社ディレクタス 執筆:北方社会保険労務士事務所 社労士 北方克典氏
|
|
|