社員の交流から発生する新しい価値【フリーアドレス・オフィス】
 固定席を持たず、社員が自由に席を選べるフリーアドレス・オフィス。省スペース化、業務の創造性向上など、さまざまな効果を期待できるというフリーアドレスについて「明豊ファシリティワークス株式会社」の大貫さんにお話を伺いました。
ゴルフコースを感じさせる贅沢な空間に、用途の異なる机と椅子が並んでいます。集中したいときは集中ブースや窓際に、簡単な打ち合わせのときは少人数で向き合えるテーブルと状況によって使い分けます。

自由に席を選ぶフリーアドレスという方式
 本社移転を機に、オフィスのフリーアドレス化を検討する経営者が増えています。近年注目を集めているフリーアドレスとは、どのようなオフィスなのでしょうか?一般的なオフィスでは、部署ごとに壁で区切られ、並んだデスクの先に管理職の席があります。さながら、会社の組織図をそのまま反映させた形です。しかし、フリーアドレス・オフィスには、固定席がありません。社員は出社すると、点在する幾つかのテーブルの一つを選んで、ノートパソコンをつなぎ業務を開始します。少し集中したいときには、集中ブースや窓際にあるカウンター席に移動します。簡単な打ち合わせのときには、数人用のテーブルに移動します。フリーアドレスとは、業務の性質に合わせ社員が自由に席を選べるオフィスなのです。
 経営者の多くは、フリーアドレス化によって、人材が交流することを求めているといいます。「従来のレイアウトでは、一つの部署で完結してしまい、他部署の社員と交流しにくい状態でした。経営者としては会社全体の総合力を高めたいというニーズがあるのです」(明豊ファシリティワークス 大貫さん)。フリーアドレスを導入されたお客様では、他部署との交流により新規プロジェクト数が大幅に増加するといった効果がありました。「専門知識とノウハウを持った異なる部署が情報を交換することで、アイデアを実現可能なサービスとして肉付し、多くのプロジェクトが生まれていったのです」

IT化によって進むオフィス革命
 フリーアドレスの背景として、業務のIT化を切り離すことはできません。フリーアドレスそのものは、90年代から業務の効率化に敏感な経営陣の話題となってきましたが、当時は設備投資に費用がかかるなど導入は難しかったのです。その状況を変えたのが、2000年前後から急激に広まったブロードバンド、携帯電話網、無線LANなどの通信サービスと、軽量化・低価格化したIT関連機器です。コストが抑えられ利用が簡単になることで、社員はノートパソコン一つあれば業務をできるようになったのです。
 オフィス・レイアウト変更の際、ポイントとなるのが書類をどう扱うかという問題です。「重要なのはペーパーレスではなく、社員に紙を所有させないペーパーストックレスです。例えば、弊社では書類を印刷するのは自由ですが、持ち続けることはできません。使った後は廃棄します。もともと情報は印刷した途端に過去のものとなり、いつまでも古い書類を持っているのは、効率的とは言えません」(前出 大貫さん)。巨大な書類棚が一つのサーバーに収まるのなら、省スペースを目指したり、その分を別の目的で使用できます。とはいえ、書類をすべてデジタル化するとコストがかかりすぎるケースもあるので、外部倉庫に委託したり、共有の書類のみを残すなどの折衷案も採られます。どちらにせよ、フリーアドレスの成功には、個人所有の書類を許さない、または明確なルールで管理することがキーとなるのです。

ちょっとした打ち合わせが必要なとき利用できる、ホワイトボードのついたエリアです。簡単な会議には、対面して会話のできるスクウェア型のテーブルが適しています。

業務に最適なビジネススタイルを模索する
 すべての業種にフリーアドレス・オフィスが適しているわけではありません。「営業職の多い会社、プロジェクト型の業務を行う会社には、フリーアドレスが向いているといえるでしょう。けれども、集中力を必要とする業務が多いときには、固定席の方が効率はよくなります」(前出 大貫さん)。また、管理職から見れば、フリーアドレスによって、部下とのコミュニケーションが変化します。自分から部下の席に行ってアプローチするなど、新しい試みが必要となるのです。こうした事情もあり、急激な変革はできない、移転まで時間の余裕がないという理由で、フリーアドレスを部分的に取り入れ、段階的なステップを踏む会社もあります。また、業態によっては中間に当たる段階的なオフィスの方が良い場合もあります。ある企業では、書類の個人所有を認めて紙のサーバールームを新設しました。社員は、専任スタッフを通じて出退社時に自分のファイルを受け渡しします。つまり、業務の実態に合ったオフィスの活用方法を考えることが第一なのです。
 インフラの整備・拡大は、日本経済に大きな影響を与え、各企業のワークスタイルやビジネススタイルを変化させてきました。同様に、オフィス・レイアウトにも変化が求められています。その流れのなかにフリーアドレスがあります。問題意識を持つ経営者は、常に業務の効率化・人材の活用を検討するものですが、フリーアドレス方式は、問題解決へのよいヒントとなることでしょう。

カフェのようにゆったりしたスペースですが、すべて業務を行うための席です。作業の目的によって空間が区切られ、適したデスク、椅子、広さに分けられています。これらの席はすべて自由に使用し、占有はできません。

   
情報セキュリティとフリーアドレス
フリーアドレスは、ISO9001認証や省スペースのためのペーパーレス以外の理由でも経営者の注目を浴びています。フリーアドレスでは、情報を一元化し個人所有を極力減らすため、セキュリティ向上の効果があるのです。ISMSの認証を目指したり、内部統制(2008年から施行される日本版SOX法の目的の一つ)を意識している企業では、書類や電子媒体を使った情報管理の方法を見直す動きがあり、フリーアドレスのオフィスは具体的な実現手段として候補に上がっているのです。

   
  明豊ファシリティワークス株式会社
常務取締役 大貫 美氏
 
   
  企業の総合価値を高めたい経営者からの相談をもとに、コンサルティングを経て業務に合ったフリーアドレスを提案している。  
   
 
 
   
 
   
 
会社データ
 
   
  明豊ファシリティワークス株式会社  
   
 
コンストラクションマネジメント手法を用い、オフィス・ビルの建設や改修プロジェクトのマネジメントを行うスペシャリスト。フリーアドレス・オフィスを多く手がける。手がけた事例は4年連続6回の「日経ニューオフィス賞」を受賞しています。

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