注目の法律研究【ハートビル法
〜高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律〜
 ハートビル法は、高齢者や身体障害者などの方々が安心して気持ちよく利用できる建築物(ハートビル)の建築を促進することにより、誰もが快適に暮らせるような生活環境づくりに寄与することを目的として法制化されましたが、これまでは、不特定多数の人々が利用するデパートやホテル、ショッピングセンターといった公共性の高い商業施設に採用されることが一般的で、就業者しか利用しないオフィスビルにおいてはなかなか導入するオーナーが増えず、障害者に優しい就労環境の実現は厳しい状況でした。
 しかし、平成15年4月に施行された改正ハートビル法に基づき、東京都では「高齢者、身体障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例」(通称:ハートビル条例)を制定。各自治体レベルでも、地域の実状に応じたきめ細かい取組が可能となりました。また、昨年4月には障害者雇用促進法の一部が改正され、企業側からも障害者に対する雇用環境の整備が注目されはじめています。大手の企業経営者にとっては、障害者の雇用率の確保も義務付けられており、今後その方向性は強まるものと思われます。今回はこのハートビル法について考え、本社等の移転時のオフィス選定の参考としていただければ幸いです。

●ハートビル法適用認定を受けることのメリット
 改正ハートビル法を受けて平成16年7月1日に施行された東京都のハートビル条例によると、 適用が義務付けられた施設は、不特定多数の人が利用する公共性の高い施設だけとなっています。共同住宅についても2,000㎡を超えるような 大型の施設のみが義務づけられ、小規模の施設については適用の義務はありません。オフィスビル等の事務所の施設には適用義務はなく、 施設利用者である企業(テナント)の考え方と規模により、採用物件を希望するケースがほとんどとなっています。 しかし、ここ数年の社会情勢の変化(景気の上昇等)により、採用市場が良くなってくると雇用者の増加に伴い、障害者の雇用数も増加して くることとなります。そのため、大手企業を中心にハートビル法適用物件(ユニバーサルデザイン導入物件)への需要が急速に高まっており、 本年に入ってから、続々と大手ゼネコンによるハートビル法適用の大型オフィスビルも竣工し、今後、本社機能の移転や企業規模を拡大する方向の 優良企業にとって、企業のアイデンティティの向上や福利厚生の向上の為にも注目したい動きとも言えます。 それでは、具体的にハートビル法の適用のメリットを考えてみましょう。
●オーナー様にとってのメリット
1.容積率の特例
お年寄りや車いすの方などが利用しやすくするためにはトイレや廊下等の面積が増えます。法律では増えた分について、容積率算定の際の特例を設けています。これにより、使用有効面積があまり減らないようにし、事業者の負担を軽くします。
2.税制上の特例
所得税、法人税の割増償却が受けられるほか、事業所税(新増設分)の非課税(お寄りなどの利用に配慮したトイレや廊下などを整備した際に増えた床の増部分)があります。
3.低利融資(人にやさしい建築物整備促進事業)
日本開発銀行等から低利の融資が受けられます。
4.優良なテナント(大手企業など)の誘致がしやすくなります
障害者雇用促進法の対象となるような大手企業等優良なテナントの選考対象物件となりやすく、安定したビル運営が可能となります。

●テナント様にとってのメリット
1.社員の就業環境の向上
障害者だけでなく健常者も、ゆとりある就労環境が得られ、労働生産性や職場に対する意識が高まります。
2.人事採用上のメリット
ハートビル法適用オフィスビルに入居していることで、企業のステイタスや従業員に対する思いやりがアピールでき、人材募集の際の活動が有利となります。
3.助成金が得られるケースも
障害者の就労支援のためのジョブコーチや職場介助者を雇用する場合、企業に対して助成金が行政から支払われるケースがあります。

●ハートビル法の適用認定を受けるには…
ではハートビル法適用認定を受けるにはどのようなことをクリアしなければならないのでしょうか?オフィスビルの場合、主に以下の項目を満たしている必要があります。

●整備しなければならない基準(利用円滑化誘導基準)
・出入口の幅や段差の解消など
・廊下の幅や段差の解消など
・階段の手すりや点状ブロック等の敷設など
・スロープの勾配や滑りにくい仕上げなど
・車いす使用者の利用できる便所や昇降機の構造など
・敷地内通路の幅や段差の解消など

点字による施設案内板や
音声による案内システム
点状ブロックによる
誘導イメージ
車椅子用、歩行用の
滑り止め付き手すり

鹿島建設
株式会社
ハートビル法改正直後に導入を開始、適用第1〜3号を竣工。
今後も様々なオフィスビルが竣工します。

東京都のハートビル条例の制定で、きめ細かい対応が可能に。
益々必要性が高まる傾向で、オーナー側もテナント側も理解が必要に

私達がユニバーサルデザインに着目し始めた平成6年頃は、不特定多数の人が利用する商業施設や 公共施設にユニバーサルデザイン(バリアフリー)の意識が広がりはじめたところで、特定の人たちが利用するオフィスへの考え方は まだまだ定着していませんでした。しかし、就労環境の高質化やノーマライゼーションに対する社会要請が高まりつつある一方、 都心部で新鋭・大型のオフィスビルが覇を競う状況が呈され、近い将来のオフィス空間へのユニバーサルデザイン導入は予期しておりました。 その後当社では平成14年のハートビル法改正前後より、行政とともに実施案件協議をベースに、目指すべき方向性などを模索し、早い段階から ハートビル仕様を積極的に導入してきました。幸い関係者のご理解が得られたこともあり、ハートビル法の適用・認定を受けた先駆的プロジェクトとして、 都内第1号(秋葉原UDX:2006.1竣工)、第2号(秋葉原ダイビル:2005.3竣工)、第3号(虎ノ門タワーズ・オフィス棟:2006.8竣工)事案を 完成することができました。次世代の中・大型オフィスではハートビル対応がスタンダードとの認識も社内で定着しつつあり、現在もいくつかのプロジェクトが 施工中、計画中の段階にあります。
鹿島建設開発事業本部
開発計画部 計画課長
佐藤克久氏
安全ビル(元赤坂)
右は秋葉原ダイビル、
真中は秋葉原UDX
Photo:Koji Okumura
虎ノ門タワーズ・
オフィス棟


大成建設
株式会社
利用者の行動を深く理解し、 真の意味での
ユニバーサルデザインの実現を目指しています。
昭和55年から取り組んでいる福祉住宅の経験をもとに、 ハートビル法の
考え方のベースとなる「オフィスのユニバーサルデザイン」の集大成

大成建設のユニバーサルデザインへの取り組みは昭和55年にさかのぼります。当時、通商産業省が遂行した「新住宅プロジェクト」の一部として開発に取り組み、当時としては画期的な「利用者の立場にたった介護住宅」を発表しました。障害者施設に通い、一緒に生活し、数百時間にも及ぶヒアリングにより障害者自身と、その介護者の悩みや不便を解決するコンセプト住宅の開発に成功しました。このプロジェクトは業界内で大きな話題となり、住宅業界のみならず、内外の研究組織からも高く評価されました。時代は進み、私的環境(住宅)から公共環境(商業施設や公共施設)へとバリアフリー=ユニバーサルデザインの考え方が広がってきました。当時、プロジェクトの中心として活動した実績をもとに、私達は、内外の有識者と研究部会を組織し、次なる環境=就労スペース(オフィスのワークプレイス)のユニバーサルデザインについて研究を進めました。社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会(JFMA)の調査研究部会がそれで、ユニバーサルデザインの考え方や具体的な計画立案・運用管理のフェーズまで細かく定義し、現実的な事例を踏まえて検証しました。一昨年にまとまったUDガイドライン(約260頁・CD付)は、大きな反響と評価を受け、現在もハートビル法の運用におけるガイドラインとして利用されています。
私達、大成建設では、常に時代の先を読み、利用者の立場にたった提案ができるように研究を重ねています。商業施設や公共施設では既に多くのプロジェクトを手掛け、多くの方々に利用されておりますが、オフィスビルについても本年にはいくつかのプロジェクトが竣工します。これからもユーザーの声を幅広く取り入れ、次世代のリーディングプロジェクトを発表していく予定です。
UDガイドライン
大成建設 FM推進部
FM室長 成田一郎氏

■オフィスのお問い合せ
 森ビル株式会社 オフィス営業部
 TEL:03-6406-6300
■フォレストフロア等建材のお問い合せは
 森ビル株式会社 内装部 
 TEL:03-6406-5906(担当 高根)